この部屋、天井や壁の中にエアコンの配管が埋め込まれているんだよね。この配管ってそのまま使えるのかな…?
エアコン入れ替えでよくある悩みが、「隠ぺい配管の再利用」です。
- 新築の時、意匠にこだわってエアコン配管を隠ぺいした
- 気流ムラがすみずみまで届くように、天井埋め込みエアコンを採用した
- 中古住宅を買ったらエアコン配管が全部埋め込まれていた
見えない場所にある配管を一からやり直すのは、工事費も工期もかかる…。でも、そのまま再利用して問題があったらもっと大変。
こんな悩みを解決するため、今回は、実際に配管の気密検査を行い、問題なく再利用した事例をご紹介します。
そもそもエアコン配管って再利用できるの?
大体出来ます!業務用空調では流用することがほとんどです!
新築時に壁の中や天井裏に通したエアコン配管は、一般的に「隠ぺい配管」と呼ばれます。
この配管を再利用せず、新しく配管引き直すと、こんな工事が発生する可能性があります。
- 壁に穴をあける
- 配管を天井裏に通す場合には天井開口、補修(点検口作成で済む場合も)
- 外回りの状況によっては、足場工事などが必要になることも
正直なところ、建物への穴あけ工事自体は簡単な話なのです。
ですが、エアコン屋さんはあなたのお家の梁や筋交いなど、構造上重要な場所は知りませんので、誤ってくり抜いてしまうことも・・これは見過ごせないリスクです。
既存のエアコン隠ぺい配管を再利用できれば、作業の大幅カットが可能です!
いいね!じゃあどんどん再利用しようよ!
はい、それがおすすめです!
ただし、再利用できるのは配管が痛んでいなければ、の話です。
配管が痛んでいるか無事なのか、よく営業現場で論点になります。
この記事では、配管をきちんと検査し、白黒はっきりさせた例をご紹介します。
隠ぺい配管の再利用はどう判断する?実際に窒素耐圧検査した話
そもそも配管検査って必要なの?
エアコン営業歴15年
全数検査する必要は無いと思います。まず、配管が無事かどうか判定するのには、エラーコードの確認をしてみましょう。
エアコンの冷媒ガスが不足している場合、一般的にはリモコンにエラーが出ます。
メーカー別 代表的なガス漏れエラーコード
✅ダイキン工業 U0
✅三菱電機 U2
✅三菱重工 E57
✅日立 08
※エラーの確認方法は機種によって違いますので、まずはメーカーに確認しましょう!
こんなエラーが出ていたら、機械にガスが残っていない可能性があります!
そのまま配管を流用するのはガス漏れのリスクがありますので、事前に調査をするか、配管を新設するか考えてみましょう。
ガス漏れエラーが出ていたけど、配管再利用したい!どうすればいい?
問題は「どこから」ガスが漏れたか、です。
エアコン本体を新しくする場合、再利用可能かどうかはこんな整理になります。
A エアコン本体からガス漏れ ➡ 配管再利用できる!
B 配管からガス漏れ ➡ そのまま配管再利用できない!
C 本体と配管両方からガス漏れ ➡ そのまま配管再利用できない!
ガス漏れしていた場合、この3パターンのどれなのかを切り分けるのが「気密検査」です。
パターンAを確認出来たらよいのですが、そのためには配管に窒素を張る検査が必要です。
【ひとりごと】
たまにメーカーサービスが配管ではなく、機械だけに窒素耐圧検査を行うことがありますが、これではせっかく費用も時間もかけて調査したのに・・
●エアコン本体からガス漏れが無い
➡消去法でB「配管からガス漏れしている」ことが分かる。OK!
●エアコン本体からガス漏れがあった
➡A「エアコン本体からガス漏れしていた」
C「エアコンと配管両方からガス漏れしていた」
どっちか区別がつかない・・マジか・・。ってなります。
なので、やるなら機械も配管も必ず両方検査!強くお勧めします。
隠ぺい配管の再利用はどう判断する?実際に窒素耐圧検査した話
今回ご紹介する例は、某施設の天カセ埋め込みエアコンです。
【打ち合わせメモ】
エアコンの故障でメーカーを呼んだところ、ガス漏れと診断された。
配管新設するには壁や天井に穴をあける必要があるが、それは嫌だ。
メーカーからは多分配管ではなく、機械からのガス漏れだと思う、と言われた。
それが事実なら配管は再利用してしまいたいが・・。
承知しました!それなら気持ちよく再利用できるように一度耐圧検査をしてみましょう!
検査初日 エアコン屋さん 配管に窒素を張って気密検査をする
まずは室内機側で液管、ガス管のループを取りました。
この配管は本来エアコン本体に繋がっているものですが、エアコンから切り離して輪っかにしてあげることで、配管単体でのガス漏れ検査が可能です。

次に圧を測るゲージを取り付け、耐圧検査をかけます。

これで配管からガス漏れがないかが判定できます。
- ゲージのメモリが下がらない
=おめでとうございます!配管は無事でした! - ゲージのメモリが下がる
=配管のどこかから漏れています。そのまま再利用できず、補修が必要です。
と思ったら、室外機の近くの配管から「シューーーーーーー!」という、怪しい音が・・。
嫌な予感がして断熱材を剥いてみると・・

うわぁ・・これは露骨に漏れてますね・・
配管の断熱材を剥いてみると、緑に変色した配管から細かい傷がたくさん。。。
試しにガス漏れ検知スプレーをシュッとしてみると、こんな感じに。

ちょうど断熱材の中で雨水や結露水が溜まって腐食した感じでしょうか・・?
この緑色に変色した配管は使えませんので、バッサリと2メートルほど切断します。
無事そうな配管部分から、もう一度耐圧検査を行います。
切断した部分は屋外ですので、その先が再利用できれば、お客様の希望通りに壁に穴をあけずにすみます。

ちなみに銅管は普通オレンジ色をしており、先ほどの緑色が異常なことが分かりますね。
今度は嫌な音もしません!これで様子を見ましょう!
写真で見ての通り、ゲージは「4MPas」の所を差しています。
少しでも配管からガスが漏れていれば、数日で「3」以下に落ちてくるはず。
そうならないことを祈りつつ、今回は2週間様子を見ることにしました。
2週間後 配管気密検査結果は・・・合格!
検査開始から2週間、現場の様子を再度見に行きます。

結果は・・減圧ナシ!(=漏れなし!=再利用可能!)
これでようやく、配管流用ができることが分かりました。
隠ぺい配管を再利用する注意点 デメリットも解説!
配管再利用にデメリットってあるの?
最後に、エアコン配管を再利用するデメリットについても解説します。
- エアコン配管ガス漏れ検査には時間がかかる
- 配管の太さが合わないと、再利用できないケースもある(事前チェック可)
- 再利用した配管が結露など、トラブルを起こす
エアコン配管気密検査には時間がかかる
先ほどの事例では、配管からの漏れ検査には2週間かけました。
ちょっとずつ漏れている場合は、1日2日では減りに気づかないよ!
当然、検査している間はお客様はエアコンを使うことができません。
春や秋なら窓を開ければOK!冬は石油暖房があります。
問題は真夏、のんびり耐圧検査を待っていられるお客様は稀です。
真夏にガス漏れエラーが出ていた場合は、総合的には配管新設も検討してみましょう。
配管の太さが合わないなど、再利用できないケースもある
これは事前にエアコン屋さんに判定してもらえますので、あらかじめ既設のエアコンと入れ替え予定のエアコンの型番を伝え、再利用可能か確認してもらいましょう。
流用した配管が結露などのトラブルを起こす
これが一番厄介ですね・・。
最近の夏は、昔と比べて明らかに気温が上昇していて、それに伴い空調部材も保温性の高いものが出ています。
例えばこんなケースが実際にありました。
- 温度、湿度が異常に高い天井裏に
- (ガス漏れはしていないが)経年劣化したエアコンがついている
- それを最新のガンガン冷えるエアコンに配管流用して入れ替えた
こんなケースでは稀に、配管や室内機に結露などの問題が出てくることが有ります。
対策は、天井裏の環境を改善するか、配管と機械の保温を強化することです。
ですが「温度湿度が異常に高い天井裏」は、もともと何らかのトラブルを抱えている事も多いため、エアコン更新が理由となるケースはあまり有りません。
まとめ エアコン配管再利用のすすめと注意点
隠ぺい配管は資源!使えるものは是非活用しましょう!
そもそも、隠ぺい配管は言葉を変えれば「建物の内部で守られている配管」です。
今回の例でも、むき出しになっている外でこそ痛みはありましたが、建物に守られている箇所は案外きれいなものでした。
このように、隠ぺい配管は十分再利用可能なことがほとんどです。
エアコン配管再利用する手順をまとめると次の通りです。
- まずはエアコンのエラー表示を確認!
- 冷媒不足が原因なら、配管から漏れていないかを検査する!
- 検査中に不具合箇所が分かれば、補修!
隠ぺい配管の場合、おすすめの工事業者の探し方
お伝えしたように、配管再利用はちゃんとチェックすることが可能です。
しかし、ノウハウや検査のための道具が必要でもあり、また時間もかかります。
そのため、薄利多売のビジネスモデルである家電量販店からは敬遠されがちな工事です。
おすすめは、くらしのマーケットなどネットで業務用エアコンを請け負っている設備工事店を探すことです。
この記事で詳細掘り下げていますので、良かったら是非読んでみて下さい。

